第4章 夕虹
いつものようにインロックの要領で部屋を出る。
一歩外にでると、しとしと降る冷たい雨が体を包んだ。
傘なんかもってきてない。
俺は、まっくらな空を見上げて、少し息を吐いた。
そして、帽子を深くかぶり、早足で歩きだした。
今日のホテルはビジネス街に近いシティホテルだからか、道行く人々はサラリーマンが多く、その流れからあきらかに俺は浮いてる。
早く……早く、と、急いで歩いていたら、後ろから、
「……大野さん?」
と、名を呼ばれて凍りついた。
間違えるわけもないその声。
おまえのことは好きだけど。
よりによって、なんで今……ここで会うんだ。
無視するわけにもいかず、俺は、そっと首だけで振り返った。
そこには、傘をさして目を丸くしてる松本と、仕事帰りと思われる松本の兄貴が立っていた。
……最悪だ。
「びしょ濡れじゃん……!入れよ!」
松本が傘を差し出してきた。
だけど、俺はバイト帰りだという後ろめたさから、どうしてもそれ以上動けなくて。
男の香りがしたらどうしよう、と今更ながらに気になって。
「いや……いい。ありがとう」
早口で断り、その場から逃げるように走り出した。