第1章 三十日月1
星空を映した水鏡を揺らすのは年端もいかぬ少女であった。
湖面を前に跪き、両の手で水をすくい上げ、おずおずと口づける。
一口飲めば、後はもう夢中だった。伝い落ちる雫が着物に染みを残すがそんなことには目もくれない。喉を流れる爽快感を追い求めすくっては飲み、すくっては飲み、やがてすくうのも億劫になったのか頭から突っ込んだ。
ボコボコと音を上げ水面に湧き出る泡は、慌ただしく湧いては消えそしてまた湧いた。その勢いが弱まりやがて止まった。
数秒後
勢いよく天を仰いだ頭が半円を描いて地面に向く。
お世辞にも上品とはいえない音ともに吐き出した水が地面を叩いた。
何度かせき込んだのち浅い呼吸を幾度も肩で繰り返し、それが落ち着くとごろりと地面に転がる。
大の字に寝そべり目を閉じて、ひとりごつ。
「おなかすいた」
呟きに同調するかのように腹の虫が音をあげた。