第18章 人の生
「ったく!元気でやれよって意味だよ」
ジジは片手ですみれの頭を強めにポンポンと叩き、もう片手と目線は書類と向き合ったまま。
きっと、あえて私を見ずに、気軽に伝えようとしてくれている。
「沢山泣いて、沢山悩んで。涙が枯れたあとでいい。目の前のことを全力で取り組むのも、きっと悪かねーよ」
「…」
うん、そうだねって。
素直に頷けたらいいのに。
私は手元の書類に目線を落とし、筆を握っていることしかできなかった。
「人の命は短い。だから情熱的なんだろ」
私は、その人の短い命を奪ってしまった。
そしてその事実からいつまで経っても動けない。そんな私は弱虫の、意気地なしだ。
「あーもー!!うだうだ言ってんじゃねーよ!!
オイ、すみれ!!!!」
「は、はい!」
突然フォーに怒鳴られ、すみれは思わずピシッと背筋が伸びる。
「そうゆうの、ヤメロ!!」
「な、なにを?」
「私なんて、とか。弱虫で意気地なしとか。遠回しに自分を呪うのはヤメロ」
心の中で呟いたつもりが、不意に口からついて出てしまったようだ。思わず口を片手で塞ぐと「口じゃねぇ。顔に出過ぎなんだよ、すみれは」と言われてしまった。
「言葉には力がある。人を呪ったり、縛ったりする力だ。仇敵に呪われるならともかく、自分で自分を呪うのはやめろ。
自分くらい。自分の心の一番の味方になってやっても、いーんじゃねーの?」
フォーは椅子の上で胡座をかきながら、静かに諭すように話す。その姿がいつもの賑やかさと異なり、神聖な空気で、思わず魅入ってしまった。
確かにフォーは人ではなく、バクの曽祖父が作った守り神から派生した結晶体の人型ではあるが…
「な、なんだよ!なんか言えよっ!」
「いや、なんか…」
フォーの言葉が、ストンと胸の中で落ちた気がした。
「そっか。私は自分で自分を呪ってるんだ。」
「あ"?アタシの話聞いてたか?!」
フォーの額に怒りマークの血管が浮かぶ。そうじゃないんだよ、フォー。
「誰も、私を責めないから。」
誰かが私を責めたり呪ってくれたりしたら「ごめんなさい」って謝れるのに。