第18章 人の生
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―――場所は移り、アジア支部科学班ではジジとすみれの最終の引き継ぎが行われていた。
「すみれ、バクが好きか?」
「え?好…?」
科学班に遊びに来ていたフォーに突拍子もない質問をされ、思わず呆けた顔をしてしまった。
「もちろん好きだよ」
「即答だな」
だって私の恩師のような人だ。
私を科学班に拾ってくれたのだから、好きに決まっている。
「本当か?」
フォーに顔をじっと覗き込まれる。
あ、多分。この質問は…
「うん、好き。
だけど…多分、その“好き”じゃない」
フォーが求めてる質問の意図に気づく。私が支部長に抱いているのは親愛とか、敬愛とか。そういった類のものだと思う。
「フハハッ!支部長の奴ぁ、フラれてらー!」
「いい年して拗らせてっからな」
すみれは分かってなさそうでちゃんと分かってるな!と、ジジとフォーが私の背中をバンバンと叩く。ちょ、痛いって…!
「え、えぇ?」
支部長が私にフラレる?
何言ってるんだか、この人らは。怪訝な眼差しを向けるもこれっぽっちも相手にされなかった。
「まァ、人生何が起こるかわからないからよ」
「ほんとソレな」
「そっかー」
人生何が起こるかわからないが、私と支部長の関係は決して変わらないと思う。
すみれは仕事をしつつとはいえ、関心が薄そうな返答しかできなかった。
私の人生、これ以上何が起こると言うのだろう。良いことであっても、悪いことであっても。
「俺はさ、お前のことが心配だよ。すみれ」
「…………まあ、急な引き継ぎで内容が大まかだけど、痛っ」
「そうじゃねーだろうが!バカすみれ」
フォーのチョップをポコッとくらうも、本当は痛くなかった。「分かってんだろ?ジジが言ってる意味」とジト目で訴えられた。
痛くないチョップは、優しさの重みで胸の奥がずしりと痛んだ気がした。
「最期まで何が成功で、何が失敗かわからないからな」
「ジジ…?」
ジジが言いたい意図がいまいち汲み取れず、書類と向き合いつづけるジジに視線を投げた。