第18章 人の生
「科学班に配属後のすみれの話は、する必要がないだろう」きっと君の想像通りさ、とバクは苦笑いをした
「そーさね」
ラビは椅子から仰け反り、片腕で顔を覆った
嗚呼、本当に。もう―――
「腹が立つだろう」
「は?」
「すみれは被害者だ。罪を償う背負う必要などないのにな」
自分の考えていた事を言い当てられ、ラビは一瞬呆けた。が、再び腹立たしさが沸き立つ
嗚呼、何故捨ててくれなかったんだろう。黒の教団やAKUMA…俺の事も全て忘れて、幸せになってくれなかったんだろう
そう思う反面、黒の教団に残ってくれたおかげで再会できた嬉しさがあり、複雑な心境になる
「すみれを科学班に配属させる前に休息を与えようとしたが、拒まれてね
すみれは自分の無力さを許さない。ずっと我武者羅だ」
「今も変わりねーさ」
「だけど、その我武者羅は。以前と違って罪を償うためだけではなくなってきてる
…今はすみれのもがく姿を、傍で見ていたいと思うよ」
バクの哀愁漂う優しい眼差しは、此処に居ないすみれを想って向けられている
「科学班は少し、いや。だいぶ働きすぎさ」
「んん"、耳が痛いな」
すみれが科学班で見を粉にして仕事をしている理由はもう、皆知っている。気づいてない、許せていないのはすみれ本人だけだろう
ウォンが新しいお茶を出すためにラビのカップを下げようする。ラビはそれを手で軽く阻み、冷めきったお茶を一気に飲み干した。冷めたせいか、お茶の苦味を強く感じた
「科学班、行ってくるさ
俺のイノセンスをみせる代わりにすみれの話をする約束だったからな」
お茶、ごっそさんと。ラビはバクの執務室から立ち去ろうと席を立つ
「あと数日でジジの引継ぎも終わるだろう」
「なあ」
「ん?」
ラビは執務室の扉の取っ手に手を掛けたまま、バクに問う
「すみれのコト、どー思ってんさ?」
「可愛い部下だよ」
「へぇ」
隠し撮りしてる奴がよく言うさ!
そう言いたくなったが、言葉をのみ込んだ
「すみれを頼んだよ」
「言われんでもそーするさ」
重い気持ちとは裏腹に、ラビは手を軽くひらひらさせ今度こそ執務室を後にした