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49番目のあなた【D.Gray-man】

第18章  人の生



 「償う…?」


 何を償う?
 そう問う前に彼女は話し出した。


 「私は、ブローカーに育てられ、生きました」

 「!」


 近況のとある報告書に、ブローカーの元から保護があった事をバクは思い出す。


 「多くの人の死の上で、生きてしまった」


 彼女は泣いているのだろうか。
 か細い声が震え、今にも泣き崩れそうだ。しかし、それでも必死に立ち続けようとしている。この暗がりで彼女の表情は見えないが、そんな気がした。


 「償わないと、いけないんです」

 嗚呼、なぜ優しい人間ほど業を自ら背負うのだろう。

 「明るいところになんて、居られない…ッ!私は、許され…「勘違いをするな」


 自分でも驚くくらい、冷淡な声が出た。
 …今の彼女に必要なモノは優しや慈愛ではない。


 「もっと最小限の労力と時間で、最大限の成果を出せ。

 大勢の犠牲の上に立ってしまったならば、償え。下を見るな。過去を振り返るな。

 …そんな時間があるなら、出来る事を考えろ」


 まるで自分に言い聞かせるように言う。


 「誰も使用しない場所の清掃をするなら、科学班の役に立て」


 いずれ、それは世界を救う礎となる。
 AKUMAと戦うエクソシストの役に立つ。聖戦への勝利に繋がる。そう信じて。


 「拒否権はない。命令だ」


 それはバク家の嫡男であり、アジア支部長である自分自身も同じこと。
 拒否も選択肢も、未来も自由もない。あるのはこの聖戦に勝つこと。それだけだ。


 「どんなに惨めでも、恥ずかしくても。我々は生きていかなくてはいけないんだ」


 やはり暗がりで彼女の反応を伺う事は出来なかった。否、伺うのを辞めた。
 彼女の気持ちを察しれたところで、何も変わらない。自分も同様で、出来ることは1つしかないのだから。


 「今から俺様が貴様の上司だ。
――――名は?」





 「……すみれ

 すみれ・柳です」



―――
―――――
――――――――




 「君が知りたかった話はこんなところかい?ラビ」

 「…」


 ウォンが淹れてくれたお茶はすっかり冷めきり、ラビは湯気の立たない水面を黙って見つめた。


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