第51章 鬼のいない世界
以前のように鍛錬もしなくなったため筋肉も落ち、一月もすればかなり痩せ細ってしまっていた。
気分も落ち込み、一日中庭の桜を眺めているようになった杏。
その日も寝巻きの浴衣の上から桜色の着物を羽織っただけ、髪も櫛を通しただけの簡素な姿でいた。
時「こちらにいらしたんですね。」
杏がその声の方に振り向くと、そこには時透が立っていた。
『……あら、無一郎くん。いらしたんですね。』
時「はい。玄関先でお呼びしたんですけど、返事がなかったので……すみません。」
『いいえ、構いませんよ。こちらこそごめんなさい。気づかなくて……。』
杏は柱にもたれていた身体をゆっくりと起こしながら自身の隣に座るよう促す。
『ごめんなさい。お茶もお菓子もなくて……何もお構いできませんけど、よかったら……』
時「いえ、大丈夫ですよ。ほんの様子を見に寄っただけですから。」
杏からの誘いに時透は首を振る。
『そうですか。』
時「はい。お顔色が変わっていなくて安心しました。また来てもいいですか??」
『……もちろん。無一郎くんもまだ身体が辛いでしょうに……心配かけてしまって……。』