第51章 鬼のいない世界
しのぶから診断が降りて約二月が経った頃──…
鬼舞辻無惨が討伐されたことにより祈里と音羽は護衛兼世話役の任を解かれ、それにより杏はもう自分の世話を焼く必要はない、これからは自分の人生を歩むようにと、自身と同時期に退院した2人に告げた。
杏の五感が損なわれたことを聞いていた2人は変わらず共に過ごすことを希望していたが、そんな2人に杏は花屋敷に帰ってくることを禁じた。
数ヶ月ぶりの1人での暮らしに戻ったのだった。
杏は縁側に座り、柱にもたれかかって庭の桜を眺めていた。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚それぞれ低下してしまっていた杏だったが、その中でも最も影響の大きかったのが──…味覚だ。
食事を美味しいと感じられなってしまった。
料理についても、自分で味付けをすると濃くなってしまって健康上宜しくなく、さらには人に食べてもらうための料理などはできなくなった。
同じ理由でお菓子作りをすることもできなくなっていた。
蝶屋敷入院中はしのぶやアオイの目もあり完食していたが、屋敷に戻ってからは食事量がかなり落ちてしまっていた。