第8章 ー天使の涙ー
「え゛…」
ようやく煩わしいテストも終わり、返却されるまでの僅かな心晴れやかなこの期間。
天気もいいのでお気に入りの場所、屋上の塔屋の上で昼休みいっぱい昼寝でもしようと嬉々として塔屋に付いた梯子を登った青峰であったが、先客がいて、しかもその先客の目から涙がこぼれ落ちる瞬間を目の当たりにしてしまい、ハッと息を飲んだ。
そして、それが同じ部活のマネージャーで、涙とは縁もゆかりも無いような人物であったから、飲んだ息が変な声で出てきてしまった。
その声でこちらを振り向いた人物は、
「あ、青峰くんだぁ」
と、涙が残った瞳も涙が伝った頬も隠さず、いつも通り微笑むものだから青峰は一瞬言葉を失った。
「え、天野、どうしたんだよ…?」
ようやくそれだけ口にする。
「え?青峰くんも早くこっちおいでよー」
質問には答えてもらえず笑顔で手招きされれば、涙を見た後でかなり気まずいが見て見ぬふりして去ることもできず、まだ登りきっていない梯子を登るしかなかった。
青峰が登ってきたのを見た久遠は、今度は自分の横の床をパムパムと叩くので青峰はそれに従ってその場所に収まった。
表情は戸惑いからかしかめっ面に近いものなのだが、久遠は一向に気にしていないようだ。
「今日はいいお天気でね、空がキレイだったから一番高いところで見たかったんだぁ」
やっと質問に答えると座って後ろに手をついた状態だった久遠はそのまま後ろにコロンと横になった。
「あ、こうすると空見るの楽ちんだよ」
明るく言う久遠に涙を流していた雰囲気などなく、何かの見間違いだったのだろうかと思い始めた青峰はもともと昼寝するつもりで来ていたので自らも空を仰いで横になった。
そうすれば目の前には雲一つない青空が広がっている。
日差しだけだと暑くも感じるが、そよぐ風が爽やかで絶好の昼寝日和である。
思わず欠伸が出た。
それを見た久遠がふふふっと笑った。
「青峰くんはお昼寝に来たのー?」
「まぁな」
「いつもここで寝てるのー?」
「天気いい日はな」
「だからそんなにこんがり焼けてるんだねー」
「お前、それ馬鹿にしてるだろ?」
「えー、してないよー?何でもちょっと焦げてた方が美味しいと思うよー?」
「いや、それ完全に馬鹿にしてるだろ」
「してないよー」