第2章 ポアロ
「おはようございます」
2月の朝、カランカランという音と共に開店前のポアロという喫茶店に入ると、氷張った体を溶かすような元気な声がカウンターから聞こえてきた。
「あ!ハルさん!おはようございます!
今日も寒いですね〜」
「おはようございます、ほんと、布団から出れませんでした」
エプロン姿で開店準備を先に始めているバイト先の先輩の梓さんだ。彼女目当てに通うお客さんもいるほど、気さくで綺麗な女性だ。
私はバックヤードに荷物を入れ、エプロンをつけていつも通り一通りテーブルを拭く。梓さんはランチのメニューのサンドイッチを作っていた。
私は三ヶ月前からこの店で働いている。それまで約一年間は、ある日を境に仕事に行けなくなり、貯金を切り崩して生活していた。しかし、降谷さんに会ってから、何か仕事をした方がいいと、このバイトを紹介されたのだ。
多分自分が急にシフトに入れなくなる時に私を入れさせるためなのかもしれないけど。それでも、この三ヶ月間、私は結構張りのある生活ができているから、この仕事もかなり気に入っていた。