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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第118章 青い花の秘密


信長がただの人ではないことも、数々の修羅場を潜り抜けてきたことも、朱里は知っている。知っているからこそ、余計に落ち着かなかった。理屈では大丈夫だと分かっているのに、心が先回りしてあれやこれやと不安を拾い上げてしまうのだ。

「それがどうした?面白いではないか」

さらりと言ってのけるその一言に、朱里は言葉を失う。

(面白いって…そんな命懸けのことを)

信長は静かに立ち上がると、卓上の硝子細工を手に取り、陽の光にかざした。陽を受けた青い花弁がキラキラと煌めく。
その美しさに目を奪われて思わず見惚れてしまったが、次の瞬間には胸が痛んだ。こんなにも綺麗なものが争いの火種になるとは…指先が僅かに震え、朱里は無意識に自分の袖口を握り締めていた。

「敵はこの花を手に入れるため、必ず姿を現す」

「……」

「奴らを捕らえれば、残る六つの在処へ辿る手掛かりも掴めるやもしれん。一輪を守るだけでは、この戦は終わらぬ」

その言葉には、全てを見据えた冷静さがあった。
朱里にもそれが最善に近い策なのだと頭では理解できる。敵を誘い出し、手掛かりを掴む。そのためには囮が必要なのだと、理屈では分かっている。
それでも……

(分かっているのに、胸がざわつく)

信じるべきだとも思う。信長の判断が間違っていないことも、彼が容易く倒れる相手ではないことも分かっている。だが、頭では分かっていても、もし本当に危険が迫ったら…もし信長が傷ついたら…そう考えれば考えるほど、胸の奥が酷く締め付けられる。
その板挟みが苦しくて、朱里は息を詰めたまま、ただ拳を握り締めるしかなかった。

「それでも……私は嫌です」

小さく漏れた本音に、信長の手が止まる。
朱里は自分でも驚いたように目を見開いた。こんな風に、信長の決めた事にはっきり嫌だと言うことは滅多にない。けれど、もう飲み込めなかった。胸の奥に溜め込んでいた不安が堰を切ったように溢れ出す。

「信長様にもしものことがあったら……」

震える声は、最後まで続かなかった。言葉の先を想像するだけで、喉が詰まる。朱里は俯き、ぎゅっと目を閉じた。見ていられない。聞いていたくない。けれど、信長から目を逸らすこともできない。そんな自分がもどかしくて、悔しくて、情けなかった。

信長はゆっくりと歩み寄ると、俯く朱里の頬を両手で包み、その額に優しく口付けた。


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