第87章 *懐刀インパクト*
ゆっくりと近づき、高く振り上げられた手に持つ魔石器が鈍い光を放つ。はっきりとした殺意を目の前に、尋常じゃないほどの震えが襲う
『ひっ..ゃ..ゃ..やめて..っ..』
手足に力が入らず逃げることもできないまま、まるでスローモーションのように振り下ろされる、斬撃の与える痛みを受け入れるしかなかった
『ゃ..っ..だ、だれ、か..たすけ..』
?『ーーーーバウル様っ!!』
殺伐の空気を裂く名の通り雷撃のような一声が響き、振り下ろされた腕を間一髪の所で掴んで止めた
バウル『ーーお前は』
セベク『バウル様っ、武器をお収めください!!』
何故自分の祖父とレイラがこんな状況になっているか分からず、表情は戸惑いに満ち掴んだ手は大きく震えた
バウル『っ、離せ!..まさかお前は既にこいつの支配下に..』
セベク『な、何を仰るのですか!?僕は誰にも支配などされていません!』
バウル『お前自身が気づいていないだけだ。そこの女は、生き物全てを支配し操る黒兎。その力で我々を騙す銀の梟どもの手先かもしれんのだぞ!』
セベク『黒兎...』
支配、操る
その言葉にセベクの中に一瞬の戸惑いが生まれた。少し前まで自分も理由は違えど、祖父と同じようにレイラを毛嫌いしていたはずなのに、何故か最近は彼女をもっと知りたい、守ってやりたいと思うようになっていた
それが黒兎としての力によって"そうさせられている"のかもしれない。そう思うと、自分の心変わりにも納得がつく
しかし、そうであったとしても"守りたい"という想いは紛れもなく自分の意志だと言い聞かせ、首を横に振った
セベク『いいえ、いいえ!だとしても、これ以上傷つけられるのを黙って見過ごせません!それに、この者は僕と同じ学園の生徒です。銀の梟のことはここに来て初めて知りました!
なにより彼女は他者を操って騙し、自国のために身を賭して戦う貴方がたを裏切るようなことは、絶対にしません!!』