第87章 *懐刀インパクト*
『なんでここにいるの?もしかして、ここも魔獣さんのお家?』
ガウガウッ!!グオッ..
どうやら肯定らしく、縄張りに入ってきた人影に驚いて様子を見に来ていたのではないかと、勝手ながらに解釈した
『ごめんね、勝手にお家入っちゃって。朝になったら出てくから、今日だけここにいさせて』
言葉では伝わらないと分かっているが、その鼻面に触れ、頬から頭全体へと手を滑らせ抱きしめてどうにか想いを伝えようとする
『お願い..』
グルルル..グゥ
大人しく抱きしめられたまま少し唸ると、グイッと頭を押し付け大きく頬ずりする
『わわっ..んふふ、分かってくれたのかな?..っとと!』
腕を解放し額を撫でると、尻尾を大きく振りながらまるで大型犬のように甘えてくる。体躯の大きい魔獣に戯れつかれ後ろに尻もちをついた
『いたた..んへへ、大丈夫だよ』
心配そうに見下ろす魔獣に安心させるように笑みを浮かべると、魔獣の瞳も優しく穏やかなものになった
だが次の瞬間、勢いよく顔を上げると、レイラの背後へ向けて出会った当初のような大きな唸りをあげはじめた
ッ..!グルルルっ!!!!
『ど、どしたの?誰か、後ろにいる..?』
バウル『やはりあの時の魔獣を手懐けていたのか。鉄の者ではなくその魔獣を呼び込んで、我々を襲わせるつもりだったのか』
ゆらりと暗闇から現れたバウルは、レイラと魔獣に警戒心を露わにしながら、魔石器を片手に近づく。雲の切れ間から覗いた月明かりが彼の鋭い瞳を照らし、その輝きを増して光った
『ワニ、さん..?』
バウル『答えろ。その魔獣を使ってここを襲わせるつもりだろ』
『ち、違う!ここは魔獣さんのお家の一部で、私達が勝手に入ってきちゃったから見に来ただけなの』
バウル『そんな言い訳が通用するとでも思っているのか?』
構えた魔石器が妖しく輝く。身の危険を感じ取り、隣でバウルへ威嚇している魔獣を庇うように前へと進み出た
『だ、だめっ!魔獣さんは悪くないの!』
グオッ!?
『逃げて。すぐに逃げて』
振り返ったレイラの切羽詰まった表情に、魔獣もその危機を察知したのか、すぐに背を向けると森の奥深くへと駆けて行った