第87章 *懐刀インパクト*
リリア『お転婆姫の気まぐれに巻き込まれて、森で迷子になった挙句に野宿する羽目になったことがある。マレノア様と、レヴァーンと、俺がまだ飛行術もおぼつかなかったガキの頃だ』
いつの間にか近衛兵たちも談笑を止め、全員の視線と意識がリリアへと向けられる。少し居心地悪そうにしながらも、リリアは昔の出来事を語りだした
リリア『霧が立ち込めた闇夜の森は、あたり一面真っ白で..帰ろうにもどっちが城かも分からなかった。あの時のレヴァーンの情けない面ときたら..忘れたくても忘れられねぇ。
マレノア様はピンピンしてた。物珍しさもあってか、むしろ楽しんでる様子でな。こっちは歩き回ってクタクタなのに、眠れないからって明け方までおしゃべりに付き合わされて
..これからもずっと、俺はあのお姫様に振り回されて生きていくしかねえんだろうな』
『『...』』
バウル『その後はどうやって城に戻られたのですか?』
リリア『日が登ってすぐに、当時の近衛兵長が迎えに来た。言い出しっぺはマレノア様だってのに、なぜか俺が大目玉を食らって..
はあ..あの方に付き合ってるとロクなことがねぇ。やれやれだ』
『でも、お姫様のお話してるリィさん..優しい顔してる』
リリア『はあ?あのワガママ姫に振り回される俺が、なんであいつの話で優しい顔になるんだよ』
お前ちゃんと目、付いてんのか?と、どん引いた顔で言われ、レイラは片頬を膨らませながら、スープ皿に残った野菜を口に放り込んだ
『むぐむぐ..』
ユウ『まあまあ。それより、このスープ美味しいね』
『ん。野菜いっぱいで食べやすい』
シルバー『良かった。これなら野菜が主食のお前も満足してくれそうだな』
『もしかして、私のために?』
シルバー『ああ。だが、このスープを作ろうと言い出したのはあいつだ』
慈しみの銀の視線が、近衛兵たちにスープのおかわりを喜々としてよそうセベクへと注がれる
シルバー『出発の時もそうだが、あいつも少しずつお前を理解しようとしているんだ』
『..そっか』
シルバーの言葉を受けた深紅の瞳が、セベクを見つめるその色に熱を帯び始めていた