第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「鶴丸様っ落ち着いてください!どこにっどこに行かれるつもりですかっ!」
「うるさいっ!どこだっていいだろう!」
足元に縋り付いてきたこんのすけを振り払って部屋の障子を力任せに開け、執務室に向かった。あんずに会ってどうするのか、そんなことはわからない。わからないが居ても立っても居られなかった。
縁側を執務室に向かって歩いていると、「もう思い出さなくていい」「もういい」と叫ぶような悲痛な声が聞こえた。
視線の先にはあんずと和泉守。
和泉守の腕の中にいるあんずは泣いていた…――
『あんず様は鶴丸様のことを忘れたくて忘れたというのです……』
こんのすけの声が俺の頭の中で何度もこだまする。
まさか――和泉守は以前のあんずの気持ちを知っていてそう言って、いる…?
何故あんずが泣いているのかはわからない。だが、あんな光景を目の当たりにすると、俺の中の嘘であって欲しいという気持ちがガラガラと音を立てて崩れていく。
やはりこんのすけの言う事は本当、なのか……――
その後、俺は結局あんずと話すこともせず、焦燥感に駆られながら一人で部屋に戻った。
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