第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
【#1 疑惑】
「あれ?あんずちゃん、鶴さんいないの?」
ある午後の日鶴ちゃんに用事があるのか、光忠さんが執務室にひょこっと顔を覗かせた。
「鶴ちゃんなら買い物があるとかで今さっき万屋に行きましたけど?」
「えっ…!そうなの!?鶴さん一人で?珍しいね、いつもあんずちゃんと一緒に行ってるのに…どうしたんだろ」
「誘われなくて…ただ万屋に行ってくるって言われたから…」
「そうなの…?」
「はい…最近何度も万屋に通っているみたいなんですけど、光忠さんは何か聞いてます?」
「僕もちょっとわからないな……でも、心配することじゃないよ!きっと内緒でまた良からぬもの買いに行ってるだけじゃないかな?それか、あんずちゃんに内緒でプレゼントを選んでるんだよ」
光忠さんは鶴ちゃんが一人で万屋に行ったことに驚きを隠せない様子で、慌てて私を庇うように言葉をかけてくれる。
「光忠さんありがとう……でも私は全然気にしてませんよ。鶴ちゃんだって一人で出掛けたい時も沢山あると思うし。それより光忠さんは何か用事でもあったんですか?」
「あ、うん。醤油が足りなくなっちゃったから鶴さんとのデートがてら買ってきてもらおうと思ったんだけど…」