第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
あの日、鶴ちゃんに初めてを捧げた。
彼は優しくて、とても大切に私を抱いてくれた。
それでも初めてはどうしたって痛いもので…
だけど、それ以上に心が満たされて、幸せで。今度は幸せすぎて暫く涙が止まらなかった程だ。そんな私に鶴ちゃんは何度も何度も優しくキスをして、愛を囁いた。
幸せに浸りながら彼の温もりに包まれて、暫し眠りについて…目が覚めてすっかり雨が上がった夜道を、倦怠感が抜けきらず歩けない私をおぶって鶴ちゃんは本丸に帰った。
夜遅くに帰った上に疲れた様子でおぶられている私を見て、本丸中がそれはそれは大変な騒ぎになって…特に鶴ちゃんは私より大変だったと思う。だけど、すったもんだの末皆歓迎してくれた。
「やはり無理させてしまったんだな……すまなかった…」
「大丈夫だよ、鶴ちゃん。心配かけてごめんね…」
翌日から数日間熱が出てしまって寝込んだ私を、自分のせいだと鶴ちゃんは自身を責めた。
雨に濡れちゃったから風邪引いただけだしすぐ治るから平気、とあまりに心配する鶴ちゃんに伝えるも、彼は私に何度も謝った。嫌な顔一つせず甲斐甲斐しく看病してくれる鶴ちゃんに、逆に申し訳なくて仕方がない気持ちで一杯だったけど、一緒に居られることが嬉しくて幸せだった。
鶴ちゃんと出会って、好きになって、好きになってもらえて、沢山の初めてを経験することが出来て…
あぁ、幸せってこういうことを言うんだろうなぁって心の底から思えて、これからもずっと鶴ちゃんの傍でこんな幸せが続くんだ、と漠然と思い描いていた。
だけど、晴天ばかりではなかった。
──幸せの形は曖昧で、壊れやすいものだということを、私は知らなかったんだ。