第1章 君の中に墜ちる
「あんたは…本当に泣き虫だな」
穏やかな心臓の音と共に少し笑ったような低い声が落ちてくる。
「ごめ、んなさ、い…」と鼻を啜りながら途切れ途切れに謝ると、額に柔らかな温もりが触れ、唇にもそっと口付けられた。
昨晩の何もかも奪い尽くされるようなキスとは違う優しい感触に、ポカポカと胸の内が暖かくなる。
色んなことがあった。
色んなことがありすぎて、今こうして大倶利伽羅と居られること自体が奇跡のよう。
大倶利伽羅と迎える朝が眩しくて、愛おしくて。
数日後にはこの本丸ではなく、別の本丸に居るんだと思うと悲しくて、寂しくて仕方がないけど…
大倶利伽羅と一緒なら、この先どんなことがあっても乗り越えられる、心からそう思えた。
大倶利伽羅の背中に腕を回し抱き締めて…
その温かな感触に浸りながら…全身で幸せを噛み締めた。
君の中に墜ちる 〜fin〜