第7章 トラ男とパン女の攻防戦
最悪だ、と何度目とも知れぬ後悔をする。
こんなことを言うつもりもなかったのに、ローに嫌われたくない一心で心の内を曝してしまうムギは、やはり恋に溺れているのだろう。
暴露すればするだけ恥ずかしくなると知っていながら、ありのままの自分を知ってもらいたいと求めてしまう。
「わ、わたしだって、どうすればいいのかわかんないんですよ! ローに触られると気持ちよくなっちゃうし、わけわかんなくなっちゃうし。」
まったく感じない女性よりは、感じる女性の方が得だろう。
しかし、初めてでありながら、はしたなく喘いで乱れる女もどうかと思う。
漫画や小説でのヒロインは楚々として可愛らしく感じていたし、あんなふうに喘ぎまくって乱れてはいなかった。
「ローだって、変だって思ったでしょ? おかしいと思ったでしょ?」
質問を投げかけておきながら、ローから視線を外す。
きっとローはムギを傷つけるような返答をしないだろうけれど、怖くて顔を見られない。
少しの間を置いてからムギになにかを言おうとしたローは、しかし、言葉にならずに呻いた。
「バ……、ぐ……ッ」
漏れた声が苦しそうに思えて、外した視線をそっと戻す。
どんな顔をしているのだろうと考えたら、やっぱり怖かった。
普段と変わらぬポーカーフェイスを貫いているのか、それとも困っているだろうか。
しかし、実際に視線を戻してみると、ムギの上に覆い被さったローは顔を真っ赤にし、口を薄く開けたまま絶句していた。
予想外の反応だ。
てっきりローなら、内心でどう思おうがムギを宥めるような言葉をサラッと言うと思っていたのに。
まさか、ローの赤面した顔が見られるとは思わず、自分の羞恥も忘れ、まじまじと凝視した。