第7章 トラ男とパン女の攻防戦
(寝た、かな……?)
下手くそな子守唄をやめてローの様子を窺うと、今度こそ本当に眠っているようだった。
目標が達成されたのはよかったけれど、大変なのはここからだ。
このがっちりと絡みついたローの腕。
どうにかしてこれを外さなくてはならない。
服を着ているとあまりわからないけれど、逞しい筋肉をつけたローの腕は硬くどっしりとしている。
腕一本ですらこの調子なのだから、服を脱いだらさぞかしすごい肉体が現れるのだろう。
見たいわけではない。
ちょっとしか。
もしここで悪戯心を芽生えさせ、ローの服を捲ってみようものなら、眠った猛獣を起こした挙句、押し倒される状況に追いやられるのは必至。
少女漫画ではありがちなパターンだけど、ムギは漫画の主人公ではないので、そういう愚かな選択はしない。
身を捩らせてスペースを徐々に確保しつつ、獣を起こさないよう細心の注意を払いながら最後は蛇の如くにゅるっと抜け出した。
脱出成功に握り拳を作ってガッツポーズをしながら、足音を殺して寝室から出ていった。
向かう先は、バスルーム。
女子らしく朝シャンを……というわけではなく、もっと深刻な理由だ。
昨夜、ローに弄くり回された身体が、主に下半身がとてつもなく気持ち悪い。
考えてみれば当然で、昨夜ムギの下肢は大洪水を起こしていた。
下着は機能を果たさないくらいに濡れてしまって、気絶したために着替える暇すらなかった。
朝になって乾いた下着は、なんというか、がぴがぴしている。
夢精して下着が大変なことになった思春期男子のような気持ちでバスルームに飛び込み、ローが寝ているうちにそそくさとシャワーを浴びる。
目覚めてからずっと気持ちが悪かった下着は、予洗いをしなければならないほど、悲惨な状態になっていた。
なにが悲しくて、朝から下着を洗わなくてはいけないのだろう。