君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第23章 passionato…
「熱は無さそうっすね…」
いや、だからさっきからそう言ってんだけど…
つか、驚きのあまり忘れてたけど、
「お前、どうやってここに?」
しつこいようだが、何時何時であろうと、戸締りだけは完璧にする人間だ。
だから当然、外部の人間がそう簡単に部屋に立ち入ることは出来ない。
「ああ、それなら…」
不審がる俺に、上田がデニムのポケットから、俺の部屋番号が書かれたプレートの着いた鍵を取り出した。
「忘れたんすか? 俺、管理人の息子っすよ?」
「あっ…」
「兄貴と連絡が取れないって言ったら、様子見て来いって言われて…」
なるほどな。
それなら上田が俺の部屋にいる理由も納得が出来る。
「そっか…、悪かったな、心配かけて…」
ただ一つ気がかりなことが…
「ところで、さっき何かが割れるような音がしたけど…」
あれは空耳なんかじゃないと思う。
なにせそのせいで俺は飛び起きたんだから…
「実はその…、兄貴が目ぇ覚ましたら飯でもと思って、それで…」
「うん…、それで…なに?」
珍しく言いづらそうに口篭るから、俺もつい顔が引き攣ってしまう。
「あの…、コレ…」
ずっと背中に隠してたんだろうな…
上田が俺の前に差し出したのは、見事に真っ二つになった青いマグカップで…
智と付き合い初めの頃に、俺が勝手にペアで揃えた物だった。
「す、すんません! 新しいの買って返すんで…」
上田が土下座する勢いで頭を下げた。
「いや…、いいよ、気にしなくて…」
実際、智は“センス悪過ぎ”とか言って、あまり気に入ってなかったみたいだし…
それに、いつまでも未練たらしく残して置くのもな…って、この間から考えてたところだったから、ある意味良かったのかもしれないな。
俺が自分の手で処分するのは…出来そうにないから…