君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第23章 passionato…
「本当に気にしなくて良いから…」
俺は肩を落した上田の背中をポンと叩くと、割れたマグカップを受け取り、捨てるつもりで置いてあった新聞紙に包んだ。
「怪我は? ない?」
「…はい」
「そっか、なら良かった…。ところで飯って?」
思えば昨日の夜からだから…、丸っと一日水分以外は口にしていない。
「いや…、飯って言っても、レトルト温めただけのモンなんすけど…、食います?」
「そうだな…、少し貰おうかな…」
俺がダイニングテーブルに着くと、上田が温めたレトルトのお粥を器に移し、スプーンを添えて俺の前に置いた。
「頂きます…」
両手を合わせ、スプーンに掬ったお粥に息を吹きかけてから、口に運んだ。
「…うまっ…」
自分では腹なんか減ってないと思っていたが、実際はそうでもなかったみたいで…
俺はお粥を綺麗に平らげると、食べ始める時同様、両手を合わせた。
「助かったよ…、ありがとう…」
俺一人だったら、きっと飯のことなんて考えもしなかっただろう。
「いえ…。それであの、昨日のことなんすけど…」
「ああ、うん…」
「俺、一晩考えたんすよ…、その…なんつーか…」
あんまり上田が言いにくそうにしてるから、
「俺がどうして男を好きになったのか、ってこと?」
俺の方から先を促してやると、上田は小さく頷いてから、テーブルの上で握った両手に落した。
「俺、分かんないすよね…、元々はノーマルだった人が、いくなり男を好きになるって、ちょっと理解出来なくて…」
俺だって最初は自分が信じられなかったよ…
でも…
「それはさ、昨日も話したと思うけど、本当に“たまたま”なんだ。“たまたま”好きになったのが、男だったってだけで、他に理由なんてないよ」
人を好きになることに理由なんて必要ないから…
「智と出会って、彼の魅力…って言うのかな…、に惹かれて…、気が付いたら、もう後には引き返せないくらい、智のことが…」
好きになっていたんだ。