第29章 カモミールの庭で
夕闇にとらわれた青灰色の瞳が不敵に笑っている。
マヤは完全に身も心も奪われて、虜になってしまっていた。
「……嫌じゃ… ないです…」
やっと喉の奥から絞り出した声は、か細くて。
「嫌じゃねぇなら、どうしてほしい…?」
……どうしてそんなに意地悪なの…?
私が今兵長にしてほしいことなんて、たったひとつに決まっている。
もっと強く抱きしめて、もっと深く口づけて。
私のまだ知らない、その先のすべてを…。
でもそんなこと言える訳がないわ。
そんなことを自分から言うなんて、はしたなくないかしら?
それにやっぱり少し怖い。
どうしてほしいのか、わからなくなってくる。
「……わからないです…」
「わからねぇなら教えてやる」
リヴァイはその言葉を言い終わらないうちに、マヤのくちびるに貪りついてきた。
「……んんっ!」
噛みつくようなキスをされて、息ができない。逃れるように首を左右に振っても、決して放してくれない。
先ほどはゆっくりと丁寧になぞった歯列の裏も、蹂躙するように乱暴で。そのつづきで上あごのざらざらした部分をべろべろと舐めつくせば、マヤの背すじに戦慄が走った。
……これは一体なに…?
気持ちいいのか怖いのかわからない、不思議な感覚。鳥肌が立つような、ぞわぞわしつつも、足腰の力が抜けて立っていられないような。
「……あぁ、やぁっ…」
リヴァイの唾液に溺れそうになってもがいているマヤの舌先を強く吸われて。
じゅるじゅると耳元で響くのは、聞いたことのないような淫猥で官能的な水音。
「……へ、兵長…。わかったから…」
“もうこれ以上はやめて” となんとか息をする合間に伝えようとしても、リヴァイはさらに強くマヤを抱きしめて、角度を変えて口づけてくる。舌の裏まで濃密に舐められて、逃げても逃げても絡んでくる熱い舌が、もう喉の奥まで差しこまれるのではないかと、このまま窒息させられるのではないかと錯覚しそうになる。
酸素不足になってきて、頭がぼうっとしてきた。
このまま意識を失うのではないかとぼんやり思ったところへ、舌を甘噛みされる。
「んん…、ふぅ…」
舐めつくされた口中でしびれて震えている舌を何度も何度も甘噛みされていると、涙がにじんできた。