ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
本物のアスランだ。
夢の中では触れなかったのに、今はこうしてギュッと腕の中に閉じ込めてくれる。私の全部がアスランでいっぱいになるこの感じがとっても好きだ。
ここに来てからの数日、アスランが出掛けると私は体がおかしくなる。急に頭と体が誰かに乗っ取られたように言うことをきかなくなる。そうなったあとにふと気づくと全てが終わっていて、夢を見たのかもと思うくらいだった。…でもこの喉の奥の違和感と体に残る快感の余韻が夢ではないと物語る。
「ユウコ?まだ調子治らない?」
『ううん、ちょっとあついだけ』
「…じゃあ離れようか?」
『やだ…離れない』
「ふふ、言うと思った」
私の目を見たアスランはチュッと音を立てておでこにキスをした。チラッとアスランの目線が動いた先はパパのいる方だった。距離のせいで会話は聞き取れない。
私も様子を見ていると男たちはまた外へ出ていき、パパが檻に近づいてくる。
「アッシュ、少し話は遡るが初めてここに来た日、私とここを出る前にあいつらから何かを飲まされたかい?」
「…え?…ご飯以外はなにも」
「食事、か。ちなみに食事関係で何か変わった点は?」
「…ユウコのご飯の量が減ったよ。量が多くて全部食べられなかったから最初は僕が残りをもらったんだ、ね?」
『…うん、ちゃんと食べられなくてごめんなさい』
「気にしなくて良いんだよ、他には?」
「ユウコのは少し甘いような気がしたけど…気のせいかも」
「ほう…アッシュ、とても参考になったよ…では私はそろそろ行こう」
私は檻の前へ移動する。
『お仕事?』
「ああ、今日はもう来られないかもしれない」
『そっかあ…』
「そうだユウコ、今日はアッシュとキスをしてはいけないよ」
『えっ?』
突然そんなことを言われて驚いてしまった。
「…絶対にだ。守れるね?」
強い目のパパに私は理由も分からず頷く。
アスランに目をやったパパがシャッターを出ていった。