ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
ふとアスランを見ると、目が合った。咄嗟に私は俯いてしまった。キスをしろと命令されたことはあっても、してはいけないと言われたことがなかったので戸惑っていた。
「ユウコ?」
黙る私を不思議に思ったのか顔を覗き込まれる。
『……っ!、』
私はくるっとアスランに背を向けた。
「ちょっと、ユウコどうしたの?具合悪い?」
『ううん…ちがう…っ』
パパにあんなことを言われたからだ。意識しすぎてるのかついアスランの唇に目がいってしまった。
『…ぁ』
アスランの腕が左右から視界に入ったかと思うと後ろから抱きしめられる。
「どうしてそっち向いちゃうの?」
左頬にアスランの髪の毛がサラッと当たる。ドクンドクンと心臓がうるさく鳴り出した。
『キス、しちゃだめって…パパが』
「うん、確かにそう言ってたけど、目も合わせちゃだめなんて言ってなかったよ?」
『…で、でも』
「理由はわからないけど、キスしなければ良いだけでしょ?だからこっち向いてよ」
『……だ、めっ』
ここまで体が熱くなったり心臓の音がうるさいのはやっぱりおかしい。初めて私からキスをした日も気持ちが抑えられなくなったけど、こんな何かの発作みたいに呼吸が苦しくなったり体が震えるなんてことはなかった。
「…え、ユウコ……ちょっと、だっだれか」
『まって…だいじょ…ぁ、はぁ…ア、スラッ…そこにいて』
檻の端まで行き、座って深呼吸を繰り返す。
大丈夫、落ち着いて…そう自分に言い聞かせた。
本当にここ数日の私はどうしちゃったんだろう。熱で体の奥底がゾクゾクして、薄らモヤがかかったように視界がハッキリしない。自分の心や体なのに、言うことをきいてくれない時間が存在するということがとてつもなく怖かった。
『……っ』
「ユウコ…本当に大丈夫なの?」
少し離れた所から声をかけられる。頭がフラフラして、次の瞬間私はパタリと倒れた。