ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
「…これがアッシュのハグか…いいな。大人みたいなハグだね」
「あの、もう…」
僕が力を緩めて、クリスの顔を見ると突然顔がグッと近づいて軽く唇が触れた。
「っ!」
「……」
クリスは頬を紅くして僕を見つめると電話の前へ歩いていった。それから数分すると、部屋のベルが鳴る。クリスがドアを開けると先程とは別のスーツの男が立っていた。
「…じゃ、じゃあ…またね」
「ねえアッシュ、さっきのは気にしないでね!えへへ、僕…きみの驚いた顔を見たかっただけなんだぁ!今日はとっても楽しかったよ。またね、ばいばーい!」
バタンとドアが閉まった。振り返した手が宙で行き場を無くす。…ハグもキスも、一体なんだったんだ?それにあの顔も…。
至近距離で合った目は冗談を言ってるようには見えなかったけど…クリスは僕をからかっていただけだったようだ。今日は色々なことを話したけど、彼のことがわからなくなる瞬間が度々あった。急に笑ったかと思えば、突然悲しそうな顔をしたり…、話し方や声の高さが変わる時はまるで別人のようだった。
「ついておいで」
スーツの男に先導され、来た時と同じルートで外へ出た。そこには黒い車がドアを開けて待機していて、ディノも既に乗っていた。
「…さぁ、帰ろうか。」
僕が車に乗り込むとすぐに発車した。
「仲良くなれたかね?随分と長居していたではないか」
「……うん、まあ」
「あの子も賢くて健気な子だ。ユウコと少し似ているところがある」
「そうかな」
「…どういう化学反応が起こるか楽しみだよ」
ディノはニヤッと口の端を上げて僕の顔を掴んだ。唇が僕のを塞ぎ舌がねっとりと絡む。
それから僕は何度もディノに連れられクリスの部屋に行った。部屋に着くとディノは直ぐに別の部屋に行くのであの日のような変なこともしていない。
たわいもない話を繰り返すうちに、初めて会った時のあのハグやキスのことも薄れてすっかり仲良くなった。
相変わらずユウコの本当のことは話せていないけど、クリスは早くユウコに会いたいと言っていたしきっと会えば2人も仲良くなれるはず。
そう思っていたのでこの時の僕は、あまり深く考えていなかった。