ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
それからクリスは、毎月15日のクラブのことや今までに相手にした客のことを話してくれた。
ふと壁にかかっている部屋の時計に目を向けると、だいぶ長居していたことに気づく。
「…あ、僕そろそろ帰らなくちゃ」
「えっ、もう行っちゃうの?」
「これからもまた会えるんだよね?」
「うん、そうだけど…」
「えっと、コールは214だっけ」
電話に歩き始めた僕の腕をクリスが掴んだ。
「…やだ、アッシュ!やっぱりまだここにいてよ」
「クリス?どうしたの?」
「せっかくこんなに仲良くなれたんだから、まだまだゆっくり話をしようよ!」
「そうしたいんだけど…でも、ユウコが待ってるし」
「…またユウコ?留守番をさせることすら心配なペットなわけ?」
「違うよ!…僕が、早く会いたいんだ」
「…俺が掛けないと迎えはきてくれない」
「そんな、」
「じゃあ…1つお願い聞いてくれる?」
「うん、なに?」
「俺を抱きしめて」
「…えっ?」
「聞いてくれないの?」
「……わ、わかった」
クリスがそんなことを言ってくる理由はわからないけど、今は頷く他なさそうだった。抱きしめるって…ギュッてすれば良いのかな。僕は恐る恐るクリスの背中に両腕を回し軽く力を込める。
「…はい」
「違うよアッシュ…俺を恋人だと思って」
「え、恋人?そんな、」
「アッシュ、恋人いたことないの?」
「…な、ないよ」
「今までに好きな人が出来たことは?」
「それは、あるけど」
「それって……女の子?」
「うん、当たり前じゃないか」
「っ…そう。じゃあ、僕を好きな人だと思って抱き締めてよ」
クリスをユウコだと思って?
ユウコを抱きしめるみたいに…って言っても大きさが全然違う。いつもどうしてたか思い出しながら僕とほぼ変わらない高さにある頭に右手を、背中に左手を回してキュッと強く抱きしめる。すると、クリスは僕の首元に顔を埋めた。