ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
「食べないの?これ、美味いよ!俺のおすすめ」
「…僕だけこんなの食べられないよ」
「俺も食べるけど?」
「あっ…そうじゃなくて…今もその、ひとりで待ってるんだ」
「ん?…あぁ、えっとユウコ…だっけ?パパ・ディノがあんなに褒めてたんだ、きっと今頃おやつくらいもらってるさ」
ユウコのことを話しても良いのかな?でもさっきのディノの目を思い出すに、あれは話すなってことだったのかも…
「…アッシュ?」
「うん…」
僕は心配そうな目を向けるクリスの視線から逃れるようにケーキをひと口食べた。
…美味しい。
けど、やっぱりユウコと一緒じゃないと嫌だな
「そういえばアッシュ、俺になんか聞きたいことあるんじゃないの?さっきそんな目してたよね」
「うん、結構たくさん…ある」
「いいよ、なんでもどうぞ?」
「…じゃあまず、クリスはいつここにきたの?」
「俺は2年前、10歳の時に街中で声をかけられてここにきた」
「無理やり?」
「いや、ちょっと親とか…その、色々あって帰りたくなくて…これからどうしようかなって時だったから逆に助かったくらいだよ。最初は怖いこともあったけどね」
「そっか…」
「あとは?」
「ここには僕らみたいな商品はどれくらいいるの?」
「…商品か、アッシュは見かけによらずリアリストだなぁ!俺は自分が商品なんだって認めるまで結構時間かかったよ。えーっと、人数は正直俺も分からない、減っては補充を繰り返してるから」
「…減ってってどういう」
「ここって大体の商品は逃げられないように麻薬漬けにされてるんだ。決まった時間にキャンディが配られて、甘くて美味しいそれが実は麻薬、っていうね…だから商品価値が下がる頃には身体が蝕まれて死んで、ポイッだよ。どう?怖いだろ!」
「もしかして、きみもそうなの?」
「俺はキャンディ舐めてないよ…いや、舐めなかったんだ」
「…え、」
「物置みたいなところにたくさんの人数で入れられる部屋があって、俺も最初はその中にいたんだ。初めてその部屋に入った時は驚いたよ…部屋中甘ったるい匂いが充満してて、キャンディキャンディ…ってみんな呟いててさ!」
まるで、楽しい話をしているかのように明るい口調で話すクリス。本当の彼が全く見えてこない。