ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
「…喉乾いたな、ちょっと待ってて」
ローテーブルの電話にパタパタと走り、受話器を取った。
「……あ、マーク?僕だよっ!…うん、お願い!待ってるね〜」
ソファに戻ってくるクリスは僕の目を見て笑った。
「ぶはっ、アッシュ…なんだよその顔は!」
「クリスがさっきから突然別人になるからびっくりしてるんだよ!さっきまでと全然違うから…」
すると、クリスは目を逸らしてから一気に表情を変えて僕を見下ろした。
「……アッシュは、こっちの僕の方が良いの?きみの前でもこういう僕でいてあげよっか」
僕の隣に座って、首に腕を回され顔が近づく。
「僕のこと、…好きになっちゃった?」
キスされそうな距離にまで顔が迫った時、僕は両手を彼の口に宛て押し戻した。
「好きになんてなってないよ!…それに、僕はただどっちが本当のきみなんだろうって思っただけで…僕の前では別にどっちのきみでも良いし好きなようにいたらいいよ」
「っ!………ふ、ふぅん…そう」
〜♪
ベルが鳴り、クリスがドアを開ける。
「…あ、……はーい!」
「クリス、このケーキで良かったかい?」
「わあ、これ僕が美味しいって言ったやつ!マーク、覚えててくれたの?」
「あぁ、もちろんさ」
「嬉しい、マークだーいすきっ!」
クリスは背伸びをしてスーツの男の首に腕を回し、キスをした。
「…んっ、…おや、あの子が新入りか?」
「そうだよ、アッシュって言うの」
「……なるほど、こりゃまたとびきりだな」
「…もうマーク!僕ヤキモチ妬いちゃうよ!」
「ははは!…クリスが1番さ。ではまたね」
バタン
「はぁ…っ、さぁ紅茶とケーキがきたよ、ゆっくり話そうか」
サービスワゴンを押しながらソファに戻ってくる。結局僕らは向かい合わせに座った。