ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
シャッターが1番下に降りるまで、目を離せなかった。じわっと歪む視界を振り払うように瞬きを繰り返す。
アスランが言っていた通り、男たちは遠くから私を見ているだけで何かをしてくる気配はない。いつの間にそんな話をしていたんだろう。
ゆっくりとベッドに戻り、さっきまで2人で寝ていた辺りに顔を埋める。ふわっと香るのは、あのローズのボディソープ。さっきまでここに一緒にいたのに…。
会わせたい子って誰?早く帰ってこないかな。
眠る時、横になってアスランに抱き締められるとその体温と安心感ですぐに瞼が重くなる。
公園で寝泊まりしていた頃は、恥ずかしさや戸惑いにドキドキしてばかりでなかなか寝付けなかったのに、いつの間にか慣れてあの状態で眠ることが当たり前になった。
夢なのか現実なのかわからないけれど、昨日アスランが私に優しい声で何かを囁いた。それが何なのか全くわからないのに、私は何故かとても嬉しくて仕方がなかった。胸がアスランでいっぱいで、温かい気持ちのまま目が覚めた。
…そう言えば、昨日アスランは私の耳を塞いで何かを言っていた。とても切なそうな表情をして、でも目は確かに何かを伝えようとしていて…あれはなんて言っていたんだろう。聞こうと思っていて、すっかり忘れていた。昨日は本当に色んなことがあったから…
『…アスラン…、』
頭の中にはぐるぐるとアスランとのたくさんのキスが浮かんでいた。その中でもパパに命令されてしたキスは舌や唇の感触だけでなく、耳から入ってくる音にゾクゾクしておかしくなりそうだった。
私の名前を呼ぶ声も、見つめる瞳も…全てが熱くて気がつくと足に力が入らない程だった。
ドクンッ
その時、突然心臓が大きく脈打った。