ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
ユウコの頭を抱えるように抱き締める。
こうしている時は僕だけのユウコなのに。そう考えてしまう僕は、嫉妬とか独占欲とかディノに言われたことを何も否定出来ない。
…キスしろと命令されるのが大嫌いだ。
ユウコを好きっていう僕の気持ちを全部嘘にされた気がしてしまう。マービンやディノの意図は分からないし、分かりたくもないけど…僕たちのキスは僕たちだけのものであって、誰かを興奮させるためのものじゃない。そうであってほしい。
髪の毛にサラッと指を通す。
するとユウコは僕のシャツをきゅっと掴んだ。
「あっ、眠いんでしょ?」
『…んー、』
最近分かったんだけど、ユウコはベッドにいる時、眠くなるとこうやって僕のシャツを掴む。
なんか最近ユウコが小さく感じる。
僕の背が伸びたのはもちろんだけど、昔よりも守ってあげたいと強く思うようになった。好きだっていう気持ちも昔とは全然違う…不思議だ。
腕の中のユウコを見ると、やっぱり瞼が重そうだった。眠気と必死に戦ってる。
「今日は疲れちゃったよね」
『……ぅん、』
「…泣き虫ユウコだったもんね?」
『………ん』
「ねえ僕も、ユウコが隣にいてくれて嬉しいよ」
『……んー、』
「ふふっ、かわいい。僕が何言ってるのかもう分からないでしょ?」
『……ん…』
「ユウコ……?」
『…………』
睡魔との戦いに勝てなかったらしいユウコは、すぅ…と寝息をたてて眠ってしまった。
そういえば、ディノに愛してると返したあとのユウコはどこか寂しそうな顔をしていた。
「…愛してる、か」
試しにその一言を口にした途端、心臓がドクンと大きな音をたてた。僕の心の奥底がじわっと熱を持つようだった。
あれ?…なんだ、この感覚。
もしかして
「…僕、やっぱりきみを“愛してる”のかな?」
軽く深呼吸をして瞼を閉じた。
「ユウコ……愛してる…」
小声で呟いてみると、巻きついていた重たい鎖が外れたように心が軽くなった。
「…おやすみ」
まだよく分からないはずの“愛”に優しく包まれ、その日僕は穏やかな気持ちで眠りについた。