ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
檻の中に戻されて、少し経つと食事が入ってきた。
「ほら、エサだぜ」
「お前、さっきの量だと多かったんだろ?これくらいならどうだ?」
『あ…うん』
「ならこれからはこの量で出してやる。アッシュは?」
「僕はちょうど良かったからこれで平気」
「そうか、わかった。」
「ユウコはさっきのミルクでまだお腹いっぱいだろうから…無理しなくていいぜ?」
『…っ』
さっき僕らがお礼を言ったのは完全に無意識だった。
考えてもみたらこんなヤツらにありがとうなんておかしい。閉じ込められて、じっと見張られて、ユウコはひどいことをされたんだ…許せるはずがない。
自分で気持ちが不安定になっているのがわかる。
これからのことを考えると体が震えるし、今度こそユウコを守れなかったらと思うととても恐ろしくて涙が出そうになる。
でもそんな中にも自分の考えはしっかりと生きていて、ユウコを突き放すことはついに出来なかった。
この檻の中で、僕らはどうすることも出来ない。
いつまで続くのか分からない地獄に今はただ感情を揺さぶられたまま生きるしかない。
さっき男たちが言っていたクラブの他の子の話。
ヤク漬け…あれは麻薬のせいで話せないって、きっとそういうことだ。ディノは車の中で、ユウコがいれば僕を麻薬で縛る必要はないって言ってたっけ…
『…ラン、…アスラン?』
「っ…あ…、なに?」
『ボーッとしてたから、』
「ごめん、ちょっと考えごとしてた」
『そっか、……あっ』
「どうしたの?」
『アスラン、ここ』
ユウコが自分の唇を指さした。
「…え?」
『だから、ここ!…これ!』
僕の唇に手が伸びたと思ったら、その指で何かをつまんだ。よく見るとパンの欠片だった。
ユウコはそれをぱくっと口に運んだ。
「…あぁついてたんだね、ありがとう。僕、てっきりキスして欲しいのかと思っちゃった」
『ち、ちがうよぉっ!』
顔を真っ赤にして僕を見るユウコを見て、少し不安が和らいだ気がした。
その後ユウコは昼よりも量が少なくなった食事を、何故か満腹に苦しみながら必死に飲み込んでいた。