ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
シャワーから出ると、アスランは既にソファに座っていた。私が出てきたことにも気付いていない様子だった。
『…アスラン?』
「っ!……あ、ユウコ」
焦った表情で私を見た彼は、バツが悪そうに目を逸らした。まだ迎えは来ないので隣に座る。
『アスラン…その、』
「ねえユウコ、僕ね…部屋は違うけどさっきもここに来たんだ」
『……やっぱり』
「さっきさ、クラブって話してたでしょ?これから僕はそこの商品になるんだって。」
『商品?』
「…そう、客とセックスするの。」
『……えっ?』
「僕はもっと汚れていくんだよ、今よりもっと…」
『そんなこと、』
「でも僕は自由になることを諦めない…いつかここを出て、またユウコと前みたいに暮らしたい」
『………っ、』
「きみはさっき僕のことを嘘つきだって言ったけど、僕はこれからもきみのために生きていくよ?…今まで通りに。」
『……う、嘘つきなんて言ってごめんね…私、自分のことばっかりでアスランの気持ち考えられてなかった』
「それは僕もなんだ、さっきはごめん。…きみもあいつらからひどいことをされたんだよね?」
『…アスランのに比べたら、全然…』
「前にも言ったでしょ?痛みは比べられるものじゃないって」
『…でも、』
「ユウコ」
『…っ、うん、ごめん』
「ねえ…僕たち、今もちゃんと“ふたり”だよね?ふたりだから…大丈夫だよね?」
さっきは心の距離を感じたけれど、今は迷いなく言える。私たちは、今まで通りお互いのために生きるふたりだ。
『…うん、ふたりだから…大丈夫。』
「ダイジョウブ…」
私たちはいつかのように“ダイジョウブ”と呟いた。
それは私たちの元気のおまじないだった。