ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
シャッターがあかない限り外の様子は全く窺えない。
前のように空の明るさで大体の時間を把握することも出来なくなってしまった。
男が電話をしたかと思うと、私たち2人は突然檻から出るように言われた。
「毎日シャワーが許されるのは上ランクの特権だからな。」
車に乗せられ、10分ほどのどこだか大きなお店に連れてこられた。
「……っ、」
隣のアスランは、なぜだか異様に体が強ばっていた。
「こっちだ。」
男に先導されお店の奥の通路に来ると大きな扉の部屋に案内された。
「シャワー室、2つあるからそれぞれ使え。着替えはそのテーブルにある。頃合いを見てまた来るからしっかり洗っておけよ。」
その男は部屋から出ていった。
ベッドを見つめ、眉をひそめるアスランに声を掛けた。
『…アスラン?どうしたの?』
「っううん、なんでもないよ。…僕の着替えはこっちか、じゃあまたあとで」
そう言って迷わず奥のドアを開けた。
ドアはいくつもあるのにどうしてそれがシャワー室だとわかったんだろう?
私は2つほどドアを開けてようやくシャワー室に辿り着いた。
『…きらきら』
ライトに照らされて、床やそこかしこの金属がキラキラと光っていた。
シャワーを出してボディソープの泡を立てる。
するとローズのふわっとした良い香りが漂った。
『あれ?』
この香り、どこかで…
なんだっけ?
『…あっ、』
そうだ、アスランだ。
抱きしめられた時に香ったローズだ。
でも、なんで…?
そこでさっきのアスランの様子が頭に浮かぶ。
強ばった体、ベッドを見つめる姿、あたかも知っているかのように迷わずドアを開ける彼。
『…ここに、来たの?』
パパと出掛けていった時、ここに。
シャワーを浴びたってことは…
昨日までシャワーを浴びる=そういうことだった。
パパが…?アスランに…。
あまりに信じられないけど、そうだとしたらあの時のアスランの態度は納得出来る。
“おまえ”と呼んだり、私を離そうとしたり、自分を汚いと言い始めたり…。
そういえばマービンもここを出る時に言っていた。
あのお方は女は好みじゃない、と。
私は、パパにとってそういう対象じゃない。
ということはやっぱり、私はいつ捨てられることになってもおかしくない…。
改めて現実を突きつけられたような気分だった。