ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
私には絡まなかったアスランの舌が、今音を立ててあの男と…。アスランがさっき見た光景はこんな感じだったのかな。私には彼のおなかに腕を回して二人を引き離す勇気はない…見ていることも、音を聞いてることも嫌でこうして縮こまってることしか出来ない。
ずっと一緒にいたいけど、私に向けられたあの冷たい目を見るのはやっぱり悲しい…
私のことが嫌いになっちゃったんだなって、そう感じ続けながら生きていくくらいならいっそパパに捨てられてもう二度と会えない方が…
そんなの嫌に決まってるのに、頭には何度もそう浮かんできた。
その時、
膝の間からわずかに見えていたスペースにアスランの足が近付き目の前にしゃがみこんだのがわかった。
何も言わないアスランに、私も何も言えなくて顔すら上げられなかった。あの目を見るのが怖かった。
頭にふわっと手のひらが乗った。
「………ユウコ、」
『……っ!』
いつもの優しい声で名前を呼ばれた。
「…顔、あげて?」
『……だ…め、』
「なぜ?」
『………』
「……ごめんね」
えっ?
ごめんって…
私は驚いてバッと顔を上げてしまった。
するとそこには鼻と鼻が触れてしまいそうなくらい近くにアスランの顔があった。目を見ないようにギュッと瞑る。
「ユウコ…大丈夫、キスはしないよ…だからそんなに怖がらないで」
『…ち、ちが…っ』
「じゃあ、どうして…?」
『……アス、…っの目…ぅ』
「僕の目?」
『みれな…っさっきの…、』
「あぁ…もう、泣き虫ユウコ…なにいってるのかわからないよ」
閉じている目から流れる涙をいつものように親指で拭ってくれる。その声も手も優しくて、私はわからなくなる。私のこともう嫌になっちゃったんだよね…?
「ユウコ、目を開けてよ」
『…っ…』
「…開けてくれないとキスしちゃうよ?」
脅してるつもりなのか、アスランはそんなことを言ってきた。まだアスランは、私がアスランとキスをしたくないんだと思ってるんだね。
…私とキスしたくないのはアスランの方でしょ?
私は目をきつく瞑ったまま開けなかった。