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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第14章 消えない傷



「ねえ、ちょっと…」

『………』

「…ユウコ?」

『っ私…あけて…ないよ?』

「……っ、なんで…、」

『…してくれるって…言った』

「だ、だめだよ…!」


キスするって、アスランが言ったんじゃない…

前にも似たようなことがあったっけ。でも今は二度目のキスの状況ともあの時のただ幼かっただけの私たちとも違う。長い地獄の日々で私たちの心は強制的に成長してしまった。




『…うそ、つき…っアスランのうそつき…』

「……」

『もう離れたくないって…ふたりでよかったって、私のために生きてくれるっていったのに…っ』

「…っ…そんな、嘘なんて」


『私のこと、きらっ…に…なっちゃっ…』


カラカラだ…喉も心も…
なのになんで涙は止まらないんだろう




「……僕が、ユウコを嫌いに?」

『…っ……』



少しの沈黙のあと、息をついたのが聞こえた。





「ほんと、なれたらいいのにね」





静かにそう呟くアスラン。



「もし、そうなれたら僕のせいできみを苦しめることも…汚してしまうと恐れることもないのに…」


『………』


「頭ではちゃんとわかってるんだよ…それなのに僕はやっぱりきみの涙を放っておけないし、突き放したくせに心がきみでいっぱいなんだ…」


『……っ』





「きみと離れたくない…ふたりでよかった…本当に、今も…嘘じゃない」



『……アス、ラン』


「ねえ、ユウコ…」


『……ぅん?』





「ほんの一瞬でいいから…抱きしめさせて?」




切なそうに言うアスランは今どんな表情をしてるんだろう。私は頑なに閉じたままの目をまだ開けることができないでいた。




「ちょっとで、いいんだ…」



すると私の答えを待たずに後頭部と背中に優しく腕が回って、アスランからはふわっとローズの香りがした。アスランは私の首元に顔を埋めて、スゥッと深く呼吸をした。そしてゆっくり腕の力を緩めて体を離そうとする。



「……っ、え?」



それを止めるように、私はアスランの背中にギュッと腕を回した。彼から小さく驚いたような声が聞こえた。
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