ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
シャッターの向こうで音がする。
帰ってきたようだ。
大丈夫、そう言い聞かせるように胸の前で手をグッと握る。
少しすると、ガラガラとシャッターの音がした。
アスランとパパがこちらに歩いてきた。
あ…だめ、
視界がグラグラと揺れる
私はそれでも柵の前に駆け寄った。
一生懸命笑顔を作る。
『…っ、おかえりなさい!』
「ああ、ただいま。…いい子にお留守番出来たかい?」
『…は、い!』
「おやまた涙を流して…そんなに寂しかったかい?ごめんよ。…少しアッシュとふたりで話をしたかったんだ。ドライブがてらね。なぁ、アッシュ。」
「……うん」
『そうなんだ、』
「ユウコも次は一緒に連れて行ってあげるか」
「ダメだよ!!」
アスランは突然遮るように大きな声を出した。
『えっ?…』
「あっ、いや……ユウコごめんね、ただいま」
柵の中に右手を伸ばして、私の涙を拭った。
「早く僕も入れて」
「ッフ…珍しいヤツめ。開けろ。」
扉が開くと無言で中に入り、私の横を通り過ぎるとベッドに座った。
「ユウコ、」
パパに呼ばれ振り返ると、私の後頭部に手を回して檻にグイッと押し付けられる。
『いっ…』
パパの顔がドアップに見えたかと思ったら唇が触れて舌が入り絡んできた。クチュッとキスの音が響く。
『んン………っふ…ぅ』
「っ、やめろっ!!!」
その声と同時に後ろから肩とお腹に腕が回ってきて、そのままグンッと後ろに引かれ倒れ込む。
『…っわ!』
背中に体温を感じて後ろを見るとアスランがフーッフーッと荒い息でパパを睨みつけていた。
「なんだアッシュ。ユウコは私の可愛いペットだよ、スキンシップをしてはいけないのかね?」
「ユウコはおまえのペットなんかじゃない!」
「…フンッ…では誰のなんだ、貴様のか?…口の利き方には気を付けたまえよ、アッシュ。」
アスランが誰かを“おまえ”なんて呼ぶのも、こんなに大きな声を出して怒っているのも初めてのことだ。