ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
「アッシュ、出なさい。」
突然頭上から降ってきた言葉に顔を上げる。
「……え?」
ガチャガチャと南京錠が外されると、扉が開いた。
「聞こえないのか?私は出なさいと言ったんだよ。」
手下の男が僕の右腕を掴んだ。引っ張られて扉側に足がよろけると
『アスランッ!!』
ユウコが僕の左腕を掴んで、悲痛な声で名前を呼んだ。目にはじわりと涙が浮かんで、黒い瞳がゆらゆらと揺れていた。
「おい、離せ!」
僕の腕を掴む男がユウコに怒鳴る。それでもユウコは僕の腕を離そうとしない。
そのとき、
「ユウコ。」
静かだけど威圧的な声が響いた。
ユウコの体は瞬時にピタッと動かなくなる。
「……わかるね?」
その直後僕を掴む力がスルスルと抜け、ユウコの腕はすとんと落ちた。
ユウコは目から涙をぽたぽたと流して僕の腕を見つめていた。
「ほら、出ろ!」
グイと引かれ、扉の外に出るとガチャガチャとすぐに施錠される。
「っ…ユウコ!」
僕は腕を振り払って柵を掴みユウコを呼ぶ。ユウコはこちらを見もせずにどこかを見つめている。
「…ユウコ、おいで?」
僕の隣から声がすると、ピクッと反応したユウコはゆっくりと男の前にやってくる。男は次から次へと流れ出る涙を指で拭うと屈んで目線を合わせた。
「これはこれは、実に愛らしい……だが、その涙は心が痛むな。さあ、笑っておくれ?」
すると、まるで人形のようにユウコは赤くなる目尻をゆっくり下げて、代わりに口角を上げた。
「…そうだ、それでいい。」
男はユウコの髪をスっと持ち上げてキスをした。
「大丈夫だよ、ユウコ。1時間ほどで戻るからね。もちろんアッシュも一緒に。それまでいい子に待っていられるかい?」
『…っ、…はい』
ユウコは震える声でそう言った。