ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
私はここではじめて後ろのアスランを振り返る。するとそれに気付いて顔を上げたアスランと目が合った。
その瞬間、緊張や恐怖で張り詰めていた私の心が彼への想いで溢れる
『………ッ』
「………なあに?」
そのふふっと微笑んだいつもの声色に胸が締め付けられて、私はベッドに腰掛けるアスランに思い切り抱きついた。
「…っわ」
突然膝の上に乗ってきた私に驚きながらも支えて腰に腕を回してくれる。
『ねえアスラン…』
「………ん?」
『私アスランと一緒に…いたいの…』
「…え、うん?」
『だから、…私……いい子に…』
首に回した腕を少し緩めてアスランの顔を見ると、優しい目をして私を見ていた。その瞬間ドクンッと心臓が脈をうつ。
…アスランと離れたくない。近くにいたい。触れていたい。
『………ア…アスラ…』
伝えたいことはたくさんあるはずなのに、何ひとつとして言葉にならない。そんな私をじっと見ていたアスランは、私の頬に手をあて、唇を親指でなぞった。
私はまるで導かれるようにアスランの唇に自分の唇を重ねた。
『………んっ、』
「…ん……ユウコ、」
『アス…ラッ…っふ…ぅ』
唇を甘噛みされて舌同士が触れ合うと、脳がピリッと痺れるような心地良さを感じた。首に回した腕に力をこめると、アスランは私の耳を包むように顔を押さえた。
元々静かだった外部の音は完全に聞こえなくなり、自分の荒くなる吐息と唇や舌が触れる感覚だけが私を支配した。ゾクゾクと気持ち良くて、頭がおかしくなりそうになる。
『…ん、はぁ…っあ、…』
「…んっ…ユウコ?」
『ねえ…もっ、として…?』
「…ッ!!」
いつもより呼吸の荒い私を気遣って唇をわずかに離したアスランにそう言うと、彼は目を大きく見開いてピキッと固まった。
『…っはあ、ア、スラン…?』
「…あれ…なんか…っ」
アスランはちらっと自分のお腹あたりを見た。
『どうしたの…?』
「…ん…いや…ちょっと…」
『…アスラン?』
「あ…大丈夫…なんでもない…ユウコ、苦しかった?」
私はアスランの膝の上に乗ったまま、首を振りまた抱きつく。首元で息を整えていると、アスランの香りが肺に広がってしあわせな気持ちになった。
やっぱり…離れたくない。