第2章 桜の前
どうせまた首領の部屋に戻ることにはなるものの、中也の元へ向かおうと気まぐれを起こして廊下に出る。
そしてそのまま中也の執務室こと、自分の執務室の隣に移動する道中。
____あいつは…最近入った新人か?
なんて、興味深そうな声が聴こえた。
武闘派組こと、“黒蜥蜴”の十人長。
立原道造から発せられた声だ。
芥川龍之介、樋口一葉を筆頭に歩くその面々に会釈だけするも、そこでやけに私に興味を示すその人の声に、衝動的に飛びかかり、投げて地面に伏せさせて…首筋に刀を当てた。
一瞬遅れてから気が付いたその場の全員に距離を取られ、警戒される。
そして、なんだとでも言いたげな目を向けるしかできない立原道造に、声を発する。
『貴方、面白いこと考えてるのね…何をしようと貴方の勝手だし、私は何も口にしないわ。邪魔もしない。ただ、……初めましてでこんなこと言うのもあれだけど』
__中也に手ぇ出したら、殺すから…私の得物は、金属だけじゃあなくってよ__
そこまで言えば、何を言おうとしているのか分かったのだろうか。
「…な、んだてめ……っ、…幹部候補だったかよ」
『……幹部ってのに興味はこれっぽっちもないけれど、そうらしいわね。まあとにかく、そういう事だから。怪我しなかった?』
「してねぇけどとりあえずまた話くらいはさせろ…お前ただの殺り手じゃねーだろ」
『か弱い乙女に乱暴はよしてよね?私は…うちの上司さえ巻き込まないでいてくれれば、後は何にも文句はないか「な、っっにしてんだ手前はああああ!!!!?」ッッッ、った、!!!?!!?』
スパン!!!と、やけにキレのいい音が響く。
そして少ししてから痛みが襲いくる頭。
『誰!?何!!?中也にも殴られたことないのに!!』
「そりゃあめでてぇな、そいつはたった今卒業しましたおめでとう…俺だよ俺!!手前の上司だよ!!」
仁王立ちするその人の手には、丸めた資料。
ハリセン感覚だろうけど結構重たかったわよそれ…
「ったく、こいつは…悪ぃな立原、うちのが。怪我してねぇか?あとこいつ口悪ぃから何言ったことか…後で死ぬほど説教すっから何でも洗いざらい白状しやがれ、いい加減こいつには躾ってもんを…」
『……リア、躾とか嫌い』
「あ?…お前なにいきなり駄々こねてんだよ」
『…、……帰る。契約も破棄。あんたのことなんかもう知らない』
