第2章 桜の前
結局私は、自分が働く分を学費、それから貯金に回すという方向に決められてしまった。
何も、言えなくなったから。
反論出来なかった…そんなに私の事考えて、私の意志を尊重した上でそんなこと言われちゃったら、何も。
書類を記入しに執務室へ戻った彼を待ちながら、首領の執務室で紅茶をいれていただく。
今は個人の付き合いという状態でいいらしい。
「いやぁ、参るねえ中也君には………あの子、学校とか行ったことないような子だからさ。行かせてやりたいんだろうね、そういう所に行きたい子なら」
『…私、一言も言ってないのに』
「そうなの?…それであそこまで考えて説得しちゃうんだから、相当リアちゃんのこと見てるんだろうねぇ……本人なりに、可愛がってるんじゃあない?」
『?私、人から可愛がられたことありません』
「……もしかしたら気付いてないだけで、大事にしてくれてる人はいるかもしれないよ。僕が保証しよう…少なくとも、中也君は君のこと育てていくつもりだろうから」
育てていく…年齢も年齢だからその表現は少し違和感はあるが、しかしまあ納得できないことはない。
…そんなことまでされてしまっては、あの人は…さながら、私の保護者のようなものではないか。
金銭的な支援なんか、シークレットサービスのすることじゃない。
分かってる、これが全て、私のシークレットサービスでもポートマフィアの五大幹部でもなく、中原中也自身のただの善意だということは。
ただ、私は…そういうのを誰かから向けられるのに、あまりにも免疫が無さすぎる。
「……“先代の君”には、お世話になったものだよ。“彼”は覚えてはいないのだろうけれど…おかげで今や“あの様子”だ。巡り巡って自分に返されてるものだと思っていればいい」
人間、一人じゃ生きていけないんだから。
初めて自分に向けて言われたその言葉。
『……中原さんも?』
「勿論だよ、今や君を傍で見ていないと心配で心配でたまらないらしいから」
『私、あの人に会ってから色んなもの貰ってばかりなのに』
「おや、中也君がかい?例えば?」
携帯電話に、髪の装飾品。
かなりのものだ、それだけでも。
私が貰ったことの無いものばかり。
与えられるということにあまりにも慣れていない私にとって、それは新鮮どころか少しの恐怖になりさえする。
「ふぅん…可愛がられてるじゃないの」
