第2章 桜の前
「折半なんかさせませんよ、プライベートを共有させろって言ってるんですこっちは。引っ越し代を持たせるのがどうとか言ってますけど、俺が行ったら生活費も勿論俺が面倒見ますし、個々で摂る分以外の食費も____」
『待って待って待って、何、どこまで考えてんの!!?何いきなりそんな勝手なこと言ってんのよ!!』
「なら言うが…お前、このままじゃ高校卒業した後に就職する道しか無いって思ってねえか?」
『は?いきなり何そんな話してんの』
少し、押し黙らされた気がする。
何、突然そんなこと。
私の進路なんてこの人にはなんら関係の無いことじゃない。
「お前、実は勉強好きだろ…やけに論文やら資料やら並べてあったし、研究分野に興味あるんじゃねえの」
『!……それが?』
「大学、行きたいんだろ」
部屋に通して…たったそれだけで、どうしてそこまでの事が分かる?
いや、どうしてそこまで推測する?
『…言っとくけど、……研究って言ったって、そこまでしなくても入り込める企業くらいあるんだからね』
「新薬やら遺伝子やらの研究にもなればそんな選択肢出てくるわけねぇだろ……いいから、お前は自分がわざわざ体張ってんだから、ちゃんと自分のために使えって言ってんだよ」
自分がしたい事のために。
私がしたいのは…先祖返りという、繰り返されるこのシステムの解明だ。
いつになっても繰り返される、この存在…私達は、死んでも尚この宿命には抗えない。
だからこそ、まずは自分達のことを知らなくてはならない。
知るためには、調べなくてはならない…調べるためには、その道具が必要だ。
知識だって、必要だ。
先祖返りだからこそ生まれたコミュニティもあるけれど、だからこそ苦しむ要因にだってなっている。
私は…こんな体から、解放されたいって、ずっと…
『……どこまで考えてんの…馬鹿じゃないの、他人のためにそんな…っ』
「…言ってたじゃねえか、学費、自分で払いたいんだって」
『!そ、れ…ま、まさかそんなことで…?』
「けど、人間限度ってもんがある…お前は抱えてるもんが多すぎるんだよ。抱えなくていいもんだってある……そんなちっせぇ細い体で支えきれるなんて考えんな」
___体、壊すから…ダメになっちまうから。女なんだからよ。
彼の言葉は、ずっとずっと、本心だった。
私の事、そんなところまで…?
