第2章 桜の前
『ハグされるのは嫌いじゃないのよ?ただね、あまりにも擽ったいことされるとちょっと苦手なの私でも』
「…嫌なことし『苦手だっただけだし、やめてくれたから謝らなくていいわよ』…」
腑に落ちていないらしい。
一発くらい殴られるとさえ思っていそうな勢いだ。
『…嫌な気分には、ならなかったから』
「……の割には服着てねぇのはどういう事なんすかリアさん。確か昨日シャツくらい着て寝てましたよね確か??俺にされたんじゃないんすかそれは」
『多分寝てる間の脱ぎ癖だから心配しないで。私布団の中で袖ある服着るの嫌いだから』
彼が罪悪感を募らせていたのはそこだったか。
悪い事をしたな。
「脱ぎ癖っておま、……あー…はい。分かった………間違っても他の野郎と添い寝すんなよ、お前」
『?私の事寝かしつけられるの、カゲ様か連勝か中也くらいのものよ??』
「寝たのか!?同じ布団で服を脱ぎきる程の時間を一緒に寝たのか!!?」
『い、いやいや…そんなに私に付き合わせられる人いな……ちょ、ちょっとあんま揺さぶらないで首もげる…っ』
「……知れば知るほど危なっかしいわお前。衝撃的すぎて目ェ冴えまくってんだけど今………朝飯前に、軽く何か腹に入れるもん作ってやろうか?」
話せば話すほど、妙に過保護になってくなこの人。
いいのか、上司がそれで。
『つ、作ってくれるの…?私のために、わざわざ??』
「あ?わざわざって、んな大層なもんじゃねぇだろ。俺はお前のシークレットサービスだぞ」
何かにつけて言い聞かせてくるな。
さては本当に執事か何かと勘違いしていないか?この人。
『あの、一応言っておくけどシークレットサービスっていうのは護衛とかボディーガードのことであって、執事や召使いとは違うのよ…?』
「あまりにも危なっかしいお嬢さん持ったらシークレットサービスも世話焼きになっちまうんだよ、いいからお前は世話焼かれてろ」
『…はい』
思わず了承してしまった。
説得されてしまった…嫌じゃなかったから。
目を丸くしたまま返事をすればん、上出来、と撫でられて、そのままキッチンへ向かわれる。
それから冷蔵庫にあった食材を使って、すぐにオムレツ入りのサラダを作り上げてしまった。
『ほ、本当に私が食べてもいいの…?』
「お前のために作ったのに食わねぇのかよ?」
『…い、いただきます』
