第2章 桜の前
一人で使うには大きすぎたベッドにも、今日は中也が入ってくる。
天蓋付きのそれに入って、どうぞ?と促してみるのだが…中々入ろうとする気配がない。
『?どうしたの、結局来ないわけ??』
「いや…普通もう少しくらい抵抗無いもんか?」
『抵抗って、どうして?』
「どうしてってお前…」
『……いいよ、抵抗あるなら強要しないし。私は普段から寝てないようなものだし、ベッド使ってもらっても構わないから』
躊躇って入ってこない中也の横を、すり抜けようとした。
しかし、腕を軽く捕まえられて、簡単にベッドにぽふ、と座らされてしまったのだ。
何、と少し焦れったくて睨むように言えば、何故だか言いにくそうに彼は口をおずおずと開く。
「いや、その…一応俺、親戚でも付き合いが長いような他の奴らでもなくて、昨日まで他人みてぇなもんだっただろ。お前はその、…なぁ…ええと、そんな男に隣に寝られて、大丈夫なのか?」
『…何その質問。性別とか関係なくない?』
「お前それで俺に襲われでもしたらどうすんだよ、発案者が言うのもあれだがあまりにも不用心すぎんだろ」
『??でも、中也はそんなこと考えて発案したんじゃないんでしょう?』
そういった意味では、私は貴方のことを信用しているというのに変な人だ。
「確かにそれはそうだが、他の見ず知らずの奴にも簡単に隙ばっか見せてんじゃねぇのお前?ナンパにでもホイホイついて行きそうな勢いだぞ」
『…襲われるなら襲われるで、今更な話だからどうだっていいわ。特に何が減るとかいうことじゃあないし』
「は…?」
親戚である双熾にさえ知らせていない事実を、何故か自然に打ち明けた。
フェアじゃなくなってしまうような気がしたのだろうか…その内どこかで勝手に知られることが恐ろしくなったのだろうか。
それならば、先にとっとと幻滅されていた方がいいだなんて思ってしまったのだろうか。
『だから、とっくに護るもんでもなんでもないっつってんのよこんな身体。知らないの?横浜で六年前集団で行われてた、女児強姦事件』
「…新聞に流れてるのを見たことくらいは」
『名前も公表されちゃってたんだけどね。お陰様で見事に本家と縁は切れ、苗字も親が付けてた名前も、諸共剥奪されましたとさ』
中也の目が、見開かれる。
『ほら、財閥の家とかになると世間体って大事だから』
