第2章 桜の前
歓迎会を平和的に終え、お風呂をいただいたら中也とまた合流する。
まだ彼は入居者ではなかったため、部屋がなかったからだ。
着替えは連勝に借りたらしく、少し大きく見える服から伸びる鍛えられた体に思わず一瞬…ほんの一瞬だけ、息を飲んだ。
『…上がった』
「……手前また髪乾かしてねぇだろ」
『こんなに長いと乾かすの大変なのよ』
「じゃあなんで切らねぇんだよ?かなり長い方だぞお前」
『世の中ちょっと髪の毛伸ばしてるだけで黙ってれば清楚系に見られて一目置かれるなんてこと分かってんのよこっちは』
「お前いきなり黒くなるよなほんと」
もてはやされたいだとかよく見られたいだとか、そういった意味ではない。
だが、一目置かれるということは、いい意味だとしても悪い意味だとしても、つまりは一線を引いた存在として認識されるということだ。
いい意味でそうなれば羨望の眼差しを向けられ、悪い意味であれば関わることを避けられる。
私にとってはそれが一番好都合なのだ。
まあ、短くすることに抵抗がある訳ではないけれど。
『…切った方が似合うかしら』
「切っても似合いはするだろうけどな。まあ、俺はその色好きだから長い方が綺麗に見えはするが」
『何それ、こんな色好きなの?変な人』
「変な人言うな。正確には、そんな感じの髪色の奴を見たことがあるだけなんだが…」
『へえ…切ろっかな』
「なんで今の流れでそうなんだよ」
『なんとなく中也が気分良くしてそうなのが気に食わなくてつい』
「あーはいはい、分かったから髪乾かしなさいねお嬢さん」
そんなに言うんなら中也が乾かしてくれればいいじゃない。
なんて、半ば当て付けのようにこぼしてしまえば、予想外にもいいけど?なんて了承される。
この人、こんな人だったっけ。
「部屋にドライヤーは?」
『未開封の貰い物なら』
「お前マジでか」
自分だってタオルドライしかしてなさそうなのにえらい言われようだ。
少しイラッとはしたものの、今はそれよりもなんだかわくわくしている気持ちが勝っているため、不問としてあげた。
部屋まで移動して、中に入ってもらう。
今日から恐らく寝る時は一緒だろうし…一緒って言ってたわよねこの人?
えっ、嘘じゃないわよね。
「…なんつうか、入るの二回目だがやっぱりやけに物が少ないんだな」
『服は多いけどね』
