第2章 桜の前
綺麗に彩られたお皿。
普段あまり手を出さない野菜が、ちゃんと並の量で乗っていた。
食べるならば好きなものよりも前だ、後味って大切だから。
ひたすら無心でシャクシャクと野菜を食べていく。
『……生野菜って、なんでこう味気ないのかしら』
「お前味付けしねぇ派なのか?」
『?味付け??』
私の一言に、私の様子を伺っていた周りの人間全員がえ、と声を漏らす。
『生野菜に味付けなんてするの??』
「ドレッシングって知ってるか?」
『…ああ、聞いた事ある。美味しいの?それ』
「食べたことねぇのかよ」
『生ではほとんど食べたことないから』
少し面食らったような顔をして、中也は静かになった。
やはり、うちが変だったのだろうか。
実家での暮らしにおいて、隔離されていた私がする食事につく野菜は…ほとんどが火の通ったものや煮込んだものなどだったから。
しんなりして、味が染み込んだものなら好きなのだけれど。
「……かけてみ。そしたら生野菜の食感好きになるかもしれねえし」
試しに、と言われたので、いくつか数がある中から中也に選んでもらって、シーザードレッシングとやらを使用する。
酸味が効いて、少しチーズの味も感じられる。
混ざっているブラックペッパーとの相性も良い。
そして何より、そのさっぱりとしたクリーミーさが生野菜のあっさり感と新鮮な食感に絡み合って、絶妙に食欲をそそってくる。
『れ、連勝!すごくない?私生でお野菜食べてる、天才じゃない!?』
「おー、天才天才。やったじゃん」
「ドレッシングでこんなにはしゃぐ高校生初めて見たぞ俺…それなら毎日食べられるか?」
『リア天才だから余裕!!』
「おお、じゃあ毎日寝かしつけてやれるな俺も」
『全部食べた』
「早ぇなおい」
素直にお気に召した。
こんな画期的なものがあったのに、どうしていままで気が付かなかったのだろう。
連勝や残夏君、果ては双熾にまで拍手される。
ふふん、と得意顔になって見せれば、何故だか中也から夕刻ぶりに撫でられる。
「はい、後は好きなもん食おうな。腹いっぱい食うんだぞ?折角豪華な料理ばっかなんだから」
機嫌も良くなれば顔も緩む。
中々やれるじゃあないか。
「うっわ、すっげー尻尾揺れてらっしゃるわ」
「中也たんて子育て慣れてんのかなぁ…?」
「デレてるリアちゃん…ッ」
