第2章 桜の前
「リアちゃん、落ち込んでる?…お菓子もっと食べよ?甘いもの、食べたら元気になるよ」
私のそんな態度に臆することもなく、気の抜けるような声が響く。
ああ、カルタか…この子は相変わらずいい子だわ。
気がつかえるっていうか、大事に思ってくれてるんだなっていうか…
『…カルタ好きぃ、ッ』
耳も尻尾も生やして抱きつきにいけば、簡単に包み込んでくれてしまう。
「よしよし…寂しかったね。私がついてるよ、リアちゃん」
『ん…』
垂れ下がりきる耳と尻尾に、カルタは全てを見透かしたように私を安心させようとしてくれるばかり。
ああもういい子、ほんと好き。
今度またお菓子作ってってあげよ。
「な、なんだありゃ…寧ろあいつの方が犬みたいじゃねぇか、耳垂れてんぞおい」
「あー…もしかしてリアちゃん、野ばらちゃん達に妬『黙れ連勝、それ以上変な事言ったらコンクリ塀に丸めてさして三日間放置するわよ』きゃあ怖い、お口チャックしとかなくちゃ」
私が妬く?
そんなわけないでしょ、妬くとかよく知らないのにそんなことになっているとかあるわけないし。
だいたい、のばら姐さんはともかくとして他のパートナー達はなんとなくパートナーっぽいじゃない。
信頼してるって言うか…“お似合い”っていうか。
「リアちゃん、中原さんに構ってもらえなくて悲しかったんだよね」
『そんなことな「だってその顔、蜻様が他の人と話してる時の顔と似てるよ?」カゲ様と同列にしないで、ありえないから』
「……骨の折れるお嬢さんだな、ったく」
わしわしと頭をかく素振りをして、彼…中也が私の方に寄ってくる。
それに警戒するようにしてカルタに顔を埋めるように抱きつけば、その言葉を彼は口にした。
「んなところにいねぇでとっととこっち来いや…いいように命令すりゃいいだろ?手前の従僕なんだからよ」
『私がそんなちっさい人間だと思ってるわけ?そんなことで一々命令しないわよ』
「そんなに器が広いんなら、今日の主役の俺がお前にねだるくらいは許してくれるんだよな?」
『…何。何馬鹿なこと考えついたのよ』
「とりあえずこっちこいっつってんだろが」
二回目だ…二回目になると、流石に意思もグラつき始める。
何これ、まるで私が、中也の所に行きたくて行きたくて仕方がなかったみたいじゃない。
「抱き着く相手間違えてんだろ、来い」
