第4章 培われしは藍晶石の光輝
甘めの、蜂蜜をとかした紅茶を一杯入れてくれ、彼の外套を掛けられる。
「あんまり肌見せるもんじゃねえから。…俺ならまだ、いいけど……他の誰にも、見せないでくれないか」
『…嫌そうだったから、見たくないのかなって』
「嫌なんじゃなくってだな?……目のやり場に困るんだよ…緊張しちまうし」
『ふぅん。…そういえば外に立原君いたけど、何か用があったんじゃないかしら』
「………お前服着る気ある?」
そんな素振りのない私に頭を抱えてから、彼は私に着せた外套の裏ボタンを完全に止め切って、扉に向かう。
…中也の匂いがする、これ。
さっき、一瞬怖かったけど…好きだなぁ、このあったかいのは。
「悪い立原、待たせ…立原?」
「…すみません中也さん、俺は決して下心を持って訪ねたわけでは」
「分かってる、さっきのは忘れろ…報告書か?早いな、中で一旦確認するから、USB貸してく…____」
戻ってくるのに、こちらを向いた瞬間に固まる彼。
そして立原君は、未確認生物を見るような目で同じく固まった。
「……中也さん、犬…飼ってましたっけ。…狐?」
「…リア、立原いんだけど」
『?…中也さんの外套嗅いだらなんかこうなっちゃった』
「なに、おま…ほんと、寂しがり屋…」
分かった、ごめん、もう好きなだけいていいから。
言外にそう言うようにして、私を抱きしめて背中を撫でる。
「えっと…?」
『…私狐の先祖返りなの。改めてよろしく、立原君』
「!!先祖返りって…成程?実際に見んのは初めてな気がするけど……へえ。可愛らしい小狐さんだなこりゃ」
政府の人間が先祖返りのシステムを知っていることは分かっていた。
まあ、知られたところでこちらも彼の弱みになるものは握っているので、大して何も危険にはならないし。
「…触んなよ、そこの椅子かけてていいから少し待ってろ」
「中也さんも嫉妬とかするんすね。正直意外です」
「うっせぇな、仕方ねぇだろ。パートナーこの女だぞ」
せっせとパソコンにデータを取り込み、立原君のタブレットと見合わせながら確認作業を進めていく。
『立原君って、意外とビビりじゃないのよねぇ…もうちょっと怖がられるかと思ってたけど』
「余計なお世話だっつの。大体、なんでこんな可愛らしい先祖返り見て怖がんだよ?」
バキッ、と中也がペンを潰した音が聞こえた。
