第3章 無口な君は誰がために(暁七)
「女の子がキッチンに立つ姿はいいよねぇ」
一月がお茶を飲みながら誰にともなく言う。「…はぁ?意味分かんねぇよ」と俺は呆れた。
「女の子が料理をするのは決まって“誰かのため”なんだよ。誰かのために頑張る女の子は可愛いでしょ?」
料理をするのは当番だからだろ、と俺は思ったが、言うだけ無駄なので口にはしない。こいつの感覚はよく分からない。
「ほら、飲んだんならコップ返せ。持っていくぞ」
はいはい、と一月が空になったコップをトレーに乗せる。緑茶の残り香がふわ、と漂った。
「近すぎるものには気付かないんだよ…ね」
独り言にも似た一月の小さな呟きは、部屋を出ていく俺には届かなかった。