第114章 安室1※
「そうですね・・・」
弱点、か。
正直な所、僕の正体が知られること以外は無いのではないかと考えるが。
こういう時の答えとしては。
「敢えて言うなら、ひなたさんでしょうか」
こう答えるのが、正しいのではないだろうか。
「わ、私・・・ですか?」
僕の答えを聞いて戸惑う彼女の顔に顔を近付けると、更にその戸惑いは大きくなったようで。
「それは・・・どういう・・・」
「そのままの意味です」
ひなたさんに、何かあれば。
ひなたさんが、僕の知らない所で何かしていれば。
ひなたさんが、あの男と・・・何かあれば。
そう考えると、冷静さは簡単に無くしてしまう。
今、僕に一番影響を与えるのは彼女だということは、間違いがない。
けれど彼女は自身の反応に反して、それを真に受けることも反論することもなく、口を僅かに尖らせたまま帰路に着いた。
「あ・・・っ」
「どうしました?」
そんな時、彼女は何かを思い出したように短く声を上げ足を止めた。
「い・・・いえ、気にしないでください」
今更、進路を変更した理由を思い出したのだろうか。
だとすると、その理由を探らない理由が無い。
彼女が僅かに視線を後ろに向けたことから、行先は過ぎてしまったことだけを察して。
「どこか寄る所でもありました?」
・・・あの男の場所へ?
直接そう尋ねはしないけれど。
限りなく、そう聞いたつもりで。
「・・・ちょっと買い物に。でも大丈夫です、今日は適当に済ませます」
けれど、彼女から出てきた言葉は予想とは反したものだった。
そこに嘘をついている可能性は、あまり感じられない。
・・・つまりは、本当に買い物に行くだけだったということだろうか。
「・・・・・・」
で、あれば。
「実は今日、少し距離はありますがひなたさんの家付近に車を置いているんです。良ければ一度帰ってから事務所に来ませんか」
「いいんですか・・・?」
彼女を1人にするのも、忍びない。
それに、色々探りを入れるにも良い機会だ。